モーガンと遊ぼう

『ウォンテッド』を観たんです。
巷では『マトリックス』やガン=カタじゃなかった『リベリオン』みたいといわれております。
みたいというかそのママで、そこにちょいと『ファイトクラブ』をまぶした感じですね。
実はもう1つモロなものがあるけど、それはオチをばらすことになるんで黙っときます。
でも上に挙げた作品は、ストーリーと基本設定が似てるのであって、全体の感触としては別の感想を持ったんです。
「うわあ、榎本俊二の漫画みてえ!」これですよ。
特に『ゴールデンラッキー』。もうね、心の中でずっと「ホマイリー!」って叫んでましたよ。

ゴールデンラッキーの1コマ。右の人物は一時期メインキャラだったジェイコブ。

最近はそうでもないけど、榎本俊二はスローモーションやストップモーションといった技法を漫画で扱ってたじゃないですか。
そのため市川崑の『東京オリンピック』になぞらえることもありました。本人によればサム・ペキンパーだそうですが。
通常は一瞬ですむから普通に見えるけど、スロー、ストップモーションにすると本当にバカな絵になる。
そういったギャグを榎本俊二は得意としていたんですが、今回の『ウォンテッド』はマサにそれでした。


この普通の動作をバカに見せるテクニック、人物のアップでも使われてしまうんですよ。
その恩恵を一番うけたのが、モーガン・フリーマン
ある場面でモーガン先生がスローモーションでとてつもなくマヌケな表情をみせるんですが、あれは素晴らしかった。
劇場だったからおとなしくしてたけど、自宅だったら大爆笑でしたね。
表情もイイんですが、あのアメリカ演劇界の重鎮がという背負ったものが笑いを倍増させております。
でも、あのモーガン・フリーマンがこんなバカなことをするなんて...とは思わなかったんですよ。
あの人は意外とバカ行動とるんです。
ホラ、賞レースとはほど遠い、オレらが観るような映画にも沢山でてるでしょ。
その最右翼が宇宙人!友情!そして便所!の『ドリームキャッチャー』ですよ。アイ、ダディッツ!
ここでモーガンは「25年間、宇宙人から地球を守り続けたウルトラ右翼軍人」というバカ丸出しの役を演じております。
ちなみに「25年〜」というのはオレが言ってるんじゃなくて、モーガン先生が自分で言いますからね。
で、なにするかと思えば、ヘリコ飛ばして宇宙人相手にミサイル乱射ですよ。ウソじゃないって。
周囲(この中にはあのトム・サイズモアもいる)がドン引きの中「地球はワシが守る!」と獅子奮迅の大活躍ですからね。
ちなみに『ドリームキャッチャー』はモーガン先生関連以外にも、絶句する場面が連発する傑作なのでお勧めです。
それを思うと、今回の『ウォンテッド』はモーガン先生のやりたいことができた映画なんじゃないかと思うんです。
今後のことなんですが、モーガン先生は高齢なので、正直先は短いでしょう。
だから重鎮とか大御所とか、そんなことは置いといて、もう本人に好きなことやらせてあげればイイと思います。
ワイヤーで吊るして飛ばすとか、グリズリーと素手で殴りあうとか、改造してメカモーガンにするとか。
「オレもいい年だ。そろそろ文字通りフリーマンになるか...」絶対にこう思ってるはずなんですよ。


そんな、夢のひろがる映画でした。ああ面白かった。