大人の味わい

『アイアンマン』を観たんです。
オレの中で、この映画最大のポイントは主人公が中年だってことですよ。
こう言うと、アメコミ界隈では珍しいことはないぜ?最近じゃニコラス・ケイジゴーストライダー演じてたじゃん?
と言われるでしょうね。ご尤もであります。
でも本作の主人公トニー・スタークは、通常のアメコミヒーローの先を行っていてヒゲを生やしてますからね。
ヒゲを生やすってのは外見年齢を上げる行為です。だってヒゲのせいで幼く見えることって無いでしょ。
オヤジの象徴であるヒゲを生やしたトニー・スタークは、他のヒーローよりさらに濃厚な中年ぶりを漂わせているんですよ。
またこのヒゲ面が頻繁に映るんですよ。
アイアンマンの中にはヒゲオヤジが入ってるんだよなってのを、絶対に忘れさせないよう何度も何度も映るんです。
しまいにゃマスク壊れて素顔でエンヤコラしますからね。もう死角ナシ。


その中年男が何すんのかと思えば、いい年して空飛ぶんですよ。しかもマッハでビューンですよ。
それ、ワザワザ言うほど変なことか?と思う人は、どうか冷静に考えていただきたい。
アナタが今まで中年男性を目にした時「お、この人飛びそうだな」と思ったことあるのかということを。
オレはない。生まれてから35年、様々な中年男性と会ってきたが「これは離陸するな」と思ったことは一度だってない。
ヒゲ面の中年男という、単身飛行から最も遠い場所にいる存在のこの行為に、オレは唖然としましたね。
観る前にそういう作品だってのは知ってたけど、そんでも言葉を失う時は失うんですよ。
これ『トランスフォーマー』でロボ軍団が「メガネ、メガネ」と連呼してる姿を見た時以来の、久々に味わう感覚でしたね。


ストーリーから外れた部分で素晴らしかったのが、アイアンマン・マーク1ですよ。

こいつの名前がブリキンガーGとかでも異議はでないと思う。
トンカチと溶接で作られたってのも素晴らしい。アメリカのボスボロットですよ。
それが火炎放射器でブオーッとかますんだから、もうこたえられない。火炎放射器とチェーンソーがあれば他いらないね。
あと、劇中にアイアンモンガーという、どうやっても言い訳のできないスゴイ名前のやつでるじゃないですか。
Iron Mongerって名前を英語圏の人間がどう受け止めるのかは分からないけど、日本人の感覚だとズバリ、バカですよ。
絶対に知性感じないって。知的な人物を見てモンガー呼ばわりしないでしょ。
アイアンモンガー、名前と外見が寸分違わず一致してましたね。
モンガーといえば思い出すのは『太陽戦隊サンバルカン』の機械生命体ですが、そいつらも1匹残らずバカでしたね。
レスラーモンガーとかハラペコモンガーとかチャガマモンガーとか。
あ、そういや機械生命体にもアイアンモンガーってのいたな。たしか鉄球の怪人だったはず。


ヒゲとかオヤジ空を飛ぶとか言ってきましたが、これはどういことかと言うと、基本設定や人物描写が面白いってことです。
CGパートではなく、役者がアレコレする場面に、本作の旨みの多くが含まれているんですよ。
軽薄だったり純真だったりバカだったりという、どっちかと言えば日常的な描写がイイんですよ。
軽薄シャチョーと誠実秘書が織り成す、『新婚さんいらっしゃい』で披露されるオモシロ話みたいなやり取りとか。
そこをしっかりやるから、CGで描かれるスンゴイ描写が「アンタ何やってんだよ!」と際立つんですよ。
もちろんCGパートだってビシっと作ってありますけどね。
結果、ヒジョーに面白かったです。オレの観た中では、本年度のベスト4に入りますよ。
しかし、当然のようにブラックサバスの『アイアンマン』が流れたんですが、ボーカルはナシだったんですよね。
まあ、歌詞を考えると本編に合ってない、もしくは合い過ぎでスンゴイ皮肉になっちゃうから仕方ないのかもしれないけど、でも「ア〜イアム、アイアンマ〜ン!」の一声は入れなきゃイカンでしょ。
そこだけは不満でした。