ザ・プレイヤー

トロピック・サンダー/史上最低の作戦』を観たんです。
これ事前に思ってたよりも、はるかに捻くれてるし挑発的な映画でしたよ。


初にカマしてんなーと思ったのが、劇中に登場する映画『シンプル・ジャック』の扱いですよ。
つぶしのきかない筋肉俳優ダグ・スピードマンが起死回生の一撃として放つも大失敗。ただ嘲笑されるだけだった。
そうなった原因として、劇中で語られるのは「やりすぎだ」でした。
アカデミー賞の常連である大俳優が『レインマン』『フォレスト・ガンプ』を例に挙げ言うわけですよ。「モロはダメ」と。
この2作の主人公は自閉症だったりオツムがアレだったりするが、一方で天才もしくは英雄なわけで、まあ超人ですよ。
そういう風に、なにか障害があるキャラクターには必ず美点を与え、ザ・ビューティフル・ピープルに仕立てあげなきゃ誰も相手にしちゃくんねーよなあってことですよ。
ちなみに例外として挙げられる『アイ・アム・サム』も大して違わないだろとは思います。
話自体もそうだけど、なにより娘役にダコタ・ファニングを配してビューティフルな側面与えてんじゃん。
もし現実的にするなら、人気子役じゃなくてどっかの地味なガキを連れてくるはずだ。
その上で『シンプル・ジャック』を否定したのは、批評家だけでなく観客だって同様だったことを描くわけですよ。
攻撃対象は身内だけじゃねえよ。今スクリーンの前で鼻毛抜いてるオマエだってターゲットだからな!と宣言すんですよ。
まあ、鼻毛抜いてたのはオレだけかもしれんけど(ついでに屁もこいた)。
となると、観客に対してもなにか仕掛けてくるんじゃないか?とかまえるわけです。


その仕掛けを成立させるのが、本作で最も輝き放つ人物レス・グロスマンですよ。
芝生のような胸毛をチラつかせ、人質を盾に金を要求されりゃ「チンカス食らえ!」と怒鳴り散らす。ああ、外道。
そんな外道が製作現場を掌握するプロデューサーとして登場するんだから、そりゃ面白いに決まってるでしょ。
トム・クルーズはホントにイイ役もらってるよなあ。
この外道プロデューサーは金のためなら何でもするという描写がなされているんですよ。全く信用できない人物です。
ここで「観客に対してもなにか仕掛けてくるんじゃないか?」という思いが再びよぎるんです。
そんな奴が指揮してるものなら、何もかもが信用できないんじゃないのか?
この映画では「ウソと思ったらホントだった」「ホントと思ったらウソだった」が繰り返されるんですよ。
そうでないシークエンスもいちいちがギャグで回収されるんです。
ギャグってのは、あえてそうしてるが本当・本気ではないってことですよ。ウソよ〜んってことです。
となると、前提条件の時点でウソなんじゃねえか?なにもかもが「騙されやがってバーカ!」じゃなかろうか。
オチに係わることなんで、大変遠回しに言うと「忍法ハーツ・オブ・ダークネスの術」と見せかけて「忍法ハーツ・オブ・ダークネスの術の術」がこの映画だったんじゃなかろうか?そう思えたんですよ。
だって終盤の“ウィ・アー・ザ・チャンピオン”な場面があまりにアッサリしてるの比べ、グロスマンの場面の長いこと。
アレはこういうことじゃなかろうか。
どうだ、俳優とかなんとか言ってもバカみてえだろう?マヌケだよな。オマエらも笑っただろう?
だが笑ってるのはオマエらだけ...そう思ってるのか?そう思ってるのならそう思っとけ。
実際には違うかもしれんがな!ブヒヒヒ!さあ、オレのケツを舐めろ!!
エンドロールのトムクル・ダンスを見てると、そんなことすら思えてきましたね。


こんなシチ面倒臭いこと考えずとも、単純にドンパチギャグとしても最高でした。
ボカーン!ズガーン!と派手だし、おまけにスイーツとして生首までついてくるんだから、至れり尽くせりですよ。
ジャック・ブラックがほぼ出落ちだったこととか、チト残念な部分もあったんですが、でも楽しかった。
本作に『ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!』と今年はコメディが豊作ですよ。