オイラはデッカイ〜、チビッコだ〜け〜ど〜

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』を観たんです。
なにか言おうにもどっから手をつけていいのやら。気づいたら、鑑賞から2週間たってたよ。


とりあえず新キャラのヨハン・クラウスは最高ですよ。公式サイトでも見れるんですが、こいつの登場シーンは笑ったね。
物々しい状況にどんなんで出てくんのと思ったら、『がんばれロボコン』のロボみたいなのが出てくるじゃない。
迎える皆(赤鬼と半魚人とハゲオヤジ)が「何アレ...」を言葉を失ってるところにいきなり「ブシュー!」。
続けて「諸君、私がヨハン・クラァーウス」と深々とおじぎ。そりゃ絶句するよな。完璧だ。
このクラウス、見た目はガス人間ですが、事故で体がエクトプラズム化してしまったという。要は幽霊人間。
だから死体に取り付いて記憶を探ったり、ポルターガイスト現象を起こしたりと変わった技を披露する。
中盤、クラウスとヘルボーイがケンカする場面あるんです。
クラウスはロッカーにとり憑き、扉をバタンバタンさせてヘルボーイをドツキまわすんですよ。
ヘルボーイの顔面にぶち当たった扉が顔面型に変形するなんて、完全に『トムとジェリー』。
ファファファファ〜ンファンってオチの時の音楽が流れる気がしたもんですよ。
ラストバトルでも大活躍のクラウス先生。いいキャラだった。ピンでも20分くらいならもたせる力ありますよ。


映画全体の話をすると、1作目とはかなり趣きが変わっておりました。
ラスプーチンとかトゥーレ協会とか、近代のオカルト要素が満載で、海外版『帝都物語』といった塩梅。つまり伝奇ですよ。
今回は敵をケルト神話から持ってきたりで、よりファンタジー色が強くなっております。
おかげで、たぶん多くの人にとってはとっつき易くなったと思う。
前作に出てきた、クロエネンとかって、月刊ムー方面の知識がある程度はないと味わい切れないと思う。
ラスプーチンにしたってさ、知ってれば「ここでコイツか!」って喜びあるけど、多くの人とってはただのヒゲオヤジでしょ。
でも今回のベツムーラ王国の連中って、バックボーンをさかのぼらなくても十分楽しめるから。
いや、あるにはあるけどね。ヌアダってのは別の読み方でヌアザ、別名アガートラム。だから銀槍の〜なのかとか。
隻腕のバロル王ってのも、たぶんフォモール族の“魔眼のバロール”からきてんでしょう。
今回、こういう要素は、話にまるで関係ないように作ってあるので、知らなくっても作品を味わうには全く問題ないです。
こういう、伝奇よりファンタジーの方が、バックボーン知らんでいい分カジュアルでいい(気がする)ってのは、必ずしも良いこととは思わないけど、本作に関してはプラスに働いております。
本作の開かれた作りに、作り手の余裕を感じるんですよ。


今回の『ゴールデン・アーミー』、オレは手練の仕事だと思いましたね。
意識的に見ればイロイロあるんだけど、それをサラリと、時には笑わせながら見せるのって場数踏んだ人間のやることでしょ。
そういう姿勢は絵作りにも表れていて、トロル市場の場面なんて、あれセンスが無い奴なら、とにかく仰々しく撮ってたはず。
そこをわりと俯瞰で撮ってて、結果ものすごく奥行きを感じる場面になってました。
あと引き出しも多い。場面ごとに若干タッチを変えて描写してんですよ。
冒頭の妖精族と人間の戦いを、人形劇で表すって時点で多彩さを感じるけど、以後の場面も使い分けている。
ヘルボーイ達は『がんばれロボコン』『トムとジェリー』的な「なっか良くケンカしな、デンガラガッタ〜」な雰囲気で描写。
一方、ヌアダは「復習するは我にあり!」な史劇調の描写ですよ。
ここまで違うんだから、対立以前に噛合うわけがない。共闘はありえんよな!とバカにでも分かるレベルで描いてるんです。
そういうのって、当たり前のことだろ?って言う人いるかもしれんけど、その上で成功させてるものって意外に少ないんですよ。
加えて恋愛もの、というか青春ものの要素を入れて、シメは古いラブソングって粋じゃないですか。


よく「シリーズものは2作目から面白くなる。説明がすんでいるおかげで、思い切り動かせるから」と言うじゃないですか。
オレはこの物言いをあまり信用してないんです。
ヒーロー初登場!ってのは、それだけでドラマティックなことだし、初めて見るんだから新鮮で楽しいでしょ。
イロイロ説明しなきゃ...ってのは言い訳だと思う。その証拠に『ロボコップ』がある。
ロボコップは出自も、とりまく環境だって特殊で、説明しなきゃイカンこと山積みだったけど、一番面白いのは1作目じゃん。
それにターミネーターだって、ダース・べーダーだって初登場時から面白かっただろ!
常々そう思ってるオレですが、本作に限っては持論を下げるんです。
1作目はそこそこの映画だったけど、この2作目は完全に上まってます。はるかに面白い。
というよりも、波長が合うって点で言えば、ここ数年でベスト1。ああ、面白かった!