『ダブル』

『ダブル』を読みました。

ダブル

ダブル

ストレートな味わいでした。もう少年マンガ的なものを感じたくらいに。


ストレートなのは味わいの話で、物語自体はイロイロと絡み合っており単純にはいかないんですがね。
声と顔を変え、かっていた組織に別人として潜りこむという、潜入捜査官ものである以上周囲を騙し続けねばならないが、その中には共に死線を潜り抜けた相棒もいて、いつバレるか分からない。
おまけに、潜ってみればボスの消息が途絶えていた。擬態か?と思うが、このまま崩壊しかねないほどに組織が揺らいでいる。ボスはどこへ?そもそも生きているのか?
こんな感じで状況は複雑なんですね。
また、主人公だって一筋縄ではいかない。
裏社会一本で過ごしてきた男だけど、そこ生き延びてきただけあって、その暴力は制御されてるんです。その一方で、こりゃ獰猛というより凶暴だってものを抱えており、それが噴出した時は、周りが絶句するようなことをしでかすワケです。
ちなみに、この凶暴さが発揮される場面、人間を挽肉にでもするような暴力もさることながら、暴力を振るわれる側の土性骨も凄まじく、ズバリ名場面であります。


そんなんでストレートなのかと言われそうですが、上記のものは印象深いけど、構成要素の1つで全てじゃないんです。
この作品、作者自が言ってますが、基本は「男の世界」なんですよ。
男の世界ってもイロイロあって、抱えてるプライドに、甲斐性が追いついてない連中が言い訳として振りかざす「男の世界」ってのがあります。現実社会で目にするのはまずコレですね。
それじゃなくて、腕に覚えありな連中が集まった時にできあがる「男の世界」。本作はこれであります。
そして、そういうコワモテ連中が、フト気を緩めた時にかもしだすイイ雰囲気。これを現すにのに使われる小道具は旨いメシ。男のイイ雰囲気は相応しい話題これだよね。でもメニューは変化球で、フィリピン料理のチャンポラド。今度さがしてみよう。


また、これは戦いの物語でもあります。オレが戦いを題材にした物語を味わう際、一番気にするのが敵が強いか?ってことです。敵は強い方が面白い。当たり前のことですね。
だからウルトラセブンは「倒せ火を吐く大怪獣」だしガンダムは「巨大な敵を撃てよ」なんですよ。
序盤で最大の敵が主人公に向かって言うんですね。お前はオレに似ていると、同じ土俵の上にいるんだと。
その上で主人公には絶対にできないことをズバっとやってのける。同種の人間だが弱点はない、そんな奴にどうやって勝つのか?
またそこにたどりつく前に、おそろしく強い兵士達を飛び越えてゆかねばならない。登場する組織はドラッグの密売組織なのに兵士と言うのは、描写が完全に傭兵部隊だから。
ここに少年マンガ的な興奮を感じたんです。


ストレートで少年マンガ的な興奮を感じ、絶句するような陰惨な場面も登場する本作、大変面白かった。
普段は拳銃より怪獣、暗黒街のアウトローより伏魔殿のマクンベーロなオレだけど、スイスイ読みました。