スッキリ!

冷たい熱帯魚』を観たんです。

ああ、でんでん。でんでん演じる村田がスゴイ。
まず風貌。ナメクジと胡桃を掛け合わせたような、もの凄くイイ顔。もちろん、そういう風に見えるよう撮ってあるってことですね。この作品以外では普通のおじさんだし。
キャラクターも最高。アッパーかつ下品。人の弱みを探ることにかけては、犬より鼻がきく。でも基本的に思慮は浅いため、行動はとにかく極端。面倒臭せえなと思ったら、もう殺す。なんと言いますか「クイズ!ヘキサゴンII」「ノーパンしゃぶしゃぶ」「グレートハンティング」といった要素を、永谷園のすし太郎で仕上げたような、そんなオヤジ。


この特異なキャラのおかげで、場面の雰囲気もなんか妙なんですよ。
元になった事件があれですから、そりゃ死体解体の場面もあるんです。けっこう露骨に映ります。しかし村田のご陽気かつねっとりした雰囲気に押されるのか、あまり凄惨さが感じられない。嫌悪感ドッコイショ!という演出がされていないってのもあるんだろうけど。
2時間半の上映時間のうち、8割の時間に村田は登場してんですが、とにかく豊かだからお楽しみが尽きないんですね。飽きない。もっと見たいと思うキャラでした。


では村田以外のキャラクターはどうだったかつうと、これも良かったんですよ。村田が輝いてるだけで、他が不発なワケじゃないです。
オレがスキなのは神楽坂恵が演じる社本妙子。安いエロを撒き散らすんですよ。安いエロってのはとにかく不穏で気まずい。もし村田が現れなくても、結局なんらかの事件が起こっていたのでは?と思わせるもんがあります。
この妙子をはじめ、ほとんどの人物になんらかのオチがつきます。この辺に「今日は偶々でんでんさんが目立つことになりましたが、でもこの場にいる皆さんが主役です!」といった、大舞台に立った時の欽ちゃん的なものを感じましたね。


とにかくスッキリした。面白かったです。『キック・アス』に続き「娯楽っていいよなあ」と思わされた映画でした。
この種の一風変わったタイプの娯楽というのは、今のような状況では後回しにされがちです。まずは最大公約数の方を満たせとなります。でも変わったモノでないと、景気づけや気晴らしにナラン!という人も少なくない数で存在するワケです。『冷たい熱帯魚』『ピラニア3D』『ムカデ人間』、こういった作品群が望む人達に届く。そういった状況に早く戻って欲しい。オレには寄付と物資援助ぐらいしかできんが、でも本当にそう思っております。