オレだってSFベスト10考えるぜ!

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20131031
SF映画ベスト10、オレも参加しますよ。

1.『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997米、ポール・バーホーベン監督、キャスパー・ヴァン・ディーン主演)
2.『猿の惑星』(1968米、フランクリン・J・シャフナー監督、チャールトン・ヘストン主演)
3.『スペース・バンパイア』(1985英、トビー・フーパー監督、マチルダ・メイ主演
4.『マトリックス』(1999米、ラリー&アンディ・ウォシャウスキー監督、キアヌ・リーヴス主演)
5.『パシフィック・リム』(2013米、ギレルモ・デル・トロ監督、チャーリー・ハナム、菊地凜子主演)
6.『ダークシティ』(1998米、アレックス・プロヤス監督、ルーファス・シーウェルジェニファー・コネリー主演)
7.『遊星からの物体X』(1982米、ジョン・カーペンター監督、カート・ラッセル主演)
8.『スキャナーズ』(1981カナダ、デヴィッド・クローネンバーグ
9.『エイリアン』(1979米、リドリー・スコット監督、シガニー・ウィーバー主演)
10.『SF新世紀レンズマン』(1984日、広川和之監督、古川登志夫主演)

選考基準は「センス・オブ・ワンダー」。
とにかく「なによ!あんたどっからそんなん持って来たんよ!」と驚いたものを選びました。
そしたら、意外とオールタイムベストから外れ、ご新規さんの名前がでましたね。
コメントは1位のこと考えてたら止まらなくなったんで、とりあえず1位だけです。

1位『スターシップ・トゥルーパーズ

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原作レイプって言葉あるじゃないですか。そして『デトロイト・メタル・シティ』ばりに「本当の原作レイプ」「1秒間10回原作レイプ」をやってのけたが本作。

原作はSFの名を借りた反共小説です。舞台となるのは必ず軍役を全うしなければ参政権は得られないという軍事政権化した社会。
ただし、基本的人権は入隊経験ナシでも保障されており、ディストピアとしては描かれないんですよ。軍隊に否定的な人物の代表として、主人公の父親が出てきます。彼はお大尽様ですが、それは事業家として優秀だからと描写されており、クズ扱いされません。まあ、そんな父親も最終的には自発的に入隊するのが、この小説なんですが。
また、50年代にアメリカ人が書いた、未来とは言えアメリカを舞台にした話なのに、主人公ジョニー・リコが白人ではなく、フィリピンにルーツを持つアジア系だってもポイントです。終盤、ジョニーが語りだす場面があるんです。身内でだけで過ごす際はタガログ語を使って話すこともあるんだ、アレって良いものだよねと。さりげなく、郷愁の思いを交えてルーツを明かす、粋な場面ですよ。
主人公がそうであることに加え、本作にはチョイ役ですが日本人とドイツ人が登場します。ジョニーと同じく、軍に志願してきた仲間として。特に日本人スズミは好意的に描かれています。映画じゃ一瞬で死んでましたが。
つまり、人種の壁、過去の因縁を乗り越え、皆が共存する、理想的なアメリカの姿ですよ。それが軍事政権下で、というかだからこそ成立していると描いているワケですね。
しかも、それを堅苦しい体裁ではなく、少年の成長物語として描いているんです。文体は全て1人称。ジョニーが読者に語るという、親しみやすい形でです。
まさに問題小説。当然、賛否はハッキリと分かれ、発表時には大変な物議をかもしたとのこと。


で、それを映画化したらですよ。
出来上がったのはバカとクズの大魔境だったじゃないですか。
バカとクズって、他になんかないのかと見渡しても、あるのは岩とデカい虫だけですよ。
オレは劇場で唖然としましたよ。アノ原作がこうなるのかよと。なんといいますか、鬼束ちひろの過去と現在の差を知ったときのアレに近いものですよ。
原作にあった繊細なものは全部無視。ひたすら低能風味の殺伐盛り付け。極め付けはフィリピン系のジョニーを演じるのが、モロに白人のキャスパー・ヴァン・ディーン
そりゃ観る前に話は聞いてましたよ。ブラックユーモアに満ちた作風であると。それに、監督はあのポール・ヴァーホーベン。素直にタカ派小説を映像化するわけがないと。
でもまさかここまでとは思わないでしょ。先に言いましたが、原作は「良きアメリカ」像を描いてるんですよ。それにナチス風味をたっぷり投入ですよ。このご意見無用ぶり、スゴイとしか言えないよな!
映画自体もスゴイ所はあります。あの地を埋め尽くすバグの大軍団は「こんな映像見たことないよ!」と衝撃を受けました。『ロボコップ』のそれを、さらに飛躍させたプロパガンダ風の映像も素晴らしい。

映画そのものの凄さと、あの話が、船頭が変わっただけで、こうも味わい変わっちゃうんだという衝撃。この2つが合わさった結果。オレのSF映画ベスト1は『スターシップ・トゥルーパーズ』で決まりであります!