ファースト・ゴス

最近、アンテナ、ブラウザに登録してあるサイトを見てると、やたら「柳生」「山田風太郎」にぶつかるんです。
もう3日に一度は、それに関する新エントリを目にするような感じ。
元々人気あるし、ずっとファンはいたけど、10年前はここまでの状況じゃなかった。
この状況はリメイク版「魔界転生」公開時に、忍法帳シリーズがドーンと出版されたのが始まりでしょう。
そして「バジリスク」がヒット、現在は「Y十M」。「SINOBI」は...「バジリスク」の余波かな。
やはり書店で簡単に買える状態だと強いですね。現役だ。
それはイイんですが、「魔界転生」に関して、ちょっと気になることがあるんです。
山風の原作が認知されるほど深作版の地位が下がってる気がするんです。
「原作に比べればお遊び」とか「腐女子向け」とか、そんな感じでけなされること増えたよね?
オレ好きなんだよ!ジュリーが天草、サニーが十兵衛の奴が!

魔界転生 [DVD]

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この映画、楽しんだしイロイロと恩恵もあったんですよ。
まず、最大の恩恵はこの映画,ゴスの理解に役立った。
この映画、転生衆に集中すると、かなりゴスゴスしい。
ヒラヒラ服、白塗り、オカルティズム、大仰、死がどうたら、暗いエロ、恨み節とゴス要素満載ですよ。
もう一つの要素であるホモ(ヤオイ)はゴスに含めるかは、かなり微妙ですけど。
別にゴスが好きってわけじゃないが、こういうものかと咀嚼するには大いに役に立ったんです。


でも、これをゴス映画と言われても困るって人もいると思う。そりゃ違うだろと。
まあ、十兵衛VS武蔵とかの剣豪ものとしての面ありますからね。そもそも原作がそうなんだし。
でも、それ以上にゴスッ気を吹き飛ばしてるのが千葉真一の存在。だってゴスに千葉ってありえないでしょ。
例えば、雰囲気たっぷりでそれ酔ってるゴスグループがいたとしましょう。
黒いヒラヒラ服着て、ワインをあおりながら「堕チユク御使ヒノ心臓」とか「恍惚の宴」とか言ってんですよ。
そこに、ヘイおまち!と焼肉定食と焼きうどん持ってったら、一瞬でそいつらは黄昏の住人から、お昼にニンニク食べた人達に変わってしまうんです。
千葉真一の投入ってのは、そういうことなんです。いや、定食どころか、横でジュージュー肉焼いてる状態ですね。
そんでもってゴスっ子達にも勧めてくんの。「ホラ、お前らも食いなよ!ポン酢?無いよ!肉はタレだよタレ!」って。
ただでさえ暑苦しい千葉ちゃんが、終盤は汗ダラダラで迫ってくる姿を見ると、そりゃジュリーと敵対するよナ!と説得力抜群ですよ。
それと丹波哲郎。ゴスに丹波ってのもありえない話だけど、この人の場合対立ではなく、異質すぎて噛み合わない。
刀鍛治の役で登場してるんですが、スンゴイのが妖刀村正を鍛え終えた場面。
すっかり弱って伏せてたのがいきなりガバァー!と立ち上がって、村正で神棚をぶった切る!
オイオイ!オッサンいきなりなんだよ...と、さすがのサニ千葉十兵衛も呆然としてると、鍛治丹波は叫ぶんですよ。
「かぁみにおうては神を切りぃ、ほぉとけにおうては仏を切る、こぉれが妖刀むぅらまさにございまするぅ...!」
空気どころか周囲の人間まるで無視。
この場面を観たときですよ。丹波哲郎って役柄云々ではなく、本人がスゴイことになってないか?って思ったのは。
あと、成田三樹夫ってかっこいいよナ!と初めて思ったのもこの映画だ。チョイ役だったけど。
その後観た「柳生一族の陰謀」の鳥丸少将が決定打だったね。ただのオカマ野郎と思いきや剣の達人。「麻呂は女は切らぬ」の台詞が決まってましたね。


ここまでで、ゴス教育、千葉オーラ、丹波経験とオレの映画鑑賞履歴においてこの映画は重要だったことに改めて気が付いた。
そりゃ、原作は傑作ですよ。映画がそれに勝ってるとは思わない。でも好きなのよ。