転生イロイロ、田宮もイロイロ

ちょっと前にヨソで、「魔界転生」のヤオイ版があってホモッ気タップリでした!てなこと言ったんですね。
しかし、あれを読んだのは10年くらい前で、しかも連載一回しか読んでない。
そんな状態でアレコレ言っちゃった。アレはまずかったなあと思っていたんですが、古本屋で見つけたんですよ。
魔界転生―夢の跡 (上巻) (Asuka comics DX)
魔界転生―夢の跡 (下巻) (Asuka comics DX)
読んでみると、記憶ってのは当てにならないですね。
たしかにボーイズラブの場面はあるんですが、そんなに多くはない。その気アリアリなのは天草四郎だけ。
アリアリと言っても、もうソレだけ!ウホッてことじゃないし。
メインとなるのが天草四郎と田宮坊太郎なので、その為の変更は多いけど、話そのものはかなり原作に沿ってます。
上下巻400ページに収めるためにかなり省いてるし、映画(深作)版の要素も多分に入ってはいますが。
あとがきによれば、作者は山田風太郎のファンとのこと。映画版も好きだそうで、なら当然か。
以下キャラクターごとの紹介や感想。

映画版に近いキャラ設定。部下ではなく、魔界衆のボス。魔界転生も四郎自らが施す。忍体はナシ。神を捨て、徳川を滅ぼす為に鬼になろうとするけど、冷酷に徹しきれない。全ては目標の為のコマにすぎん!と言いつつもお気に入りの田宮坊太郎には甘いし、坊太郎が女に目を向けると嫉妬する。オマケに無邪気になつくお類には心開いちゃったり。また、亡き同胞達を思って泣いたりととにかく同情を煽るキャラ作り。全てが失敗し、空しさに捕らわれるものの、悪魔に魂売ってるため死ぬことができず、必ず戻ってくると言い残し炎の中に消える。要は映画版を可愛らしくしたキャラ。外見も可愛らしくなっているのは、あとがきにあった「どうして16歳で死んだ四郎が、36歳でよみがえるのか...」ということなんでしょう。

  • 田宮坊太郎

完全にオリジナル。恋もなにもかも捨てて剣に生きたが、労咳で死が近づいた時「なんてショッパい人生だったのか」と大後悔。もし生まれ変わったら平穏に生きたい...そう思ってるところに四郎に出会い、魔界転生。徳川云々には興味がなく、四郎に仕えるのも復活させてくれた恩に報いるため。あとは同情。四郎とは肉体関係あるが、かっての恋人おひろの妹お雛を助ける為に四郎を裏切る。やっぱ女の方がイイのか。最後は偽りの生ではなにも得られないと悟り、四郎と共に死のうとする。ズバリ「ええもん」なキャラ。これが石川賢版で「おっ邪魔する奴はブチ殺す!」とエイリアン舌をガッと吐き出してた奴と同一人物であることを思うと、全ての意味で感慨深い。

ちゃんと出るよ。でもあまり特徴のないキャラ。基本的には原作っぽいけど、ちょっと生真面目な感じ。飄々とした描写もあるにはあるが、ページ数の所為か原作ほどじゃない。股下150cmの美青年。それなりにガッチリとしてるけど、どうやってもソニー千葉につながらない。でもいいか。ちゃんと最後まで剣で戦うし。だって石川賢版では...


メインの次は魔界衆。

  • 柳生如雲斎

如雲斎が出るよ!しかも四郎、坊太郎を除けば、魔界衆で一番出番が多い。これだけでも読む価値あるよナ!しかし代わりに宝蔵院胤舜は登場せず。荒木又右衛門も出ない。まあイイよね。だって如雲斎出るんだもん。

登場した時はすでに転生済み。十兵衛と対決はするが、途中爆発に巻き込まれて死亡。出番は大変短い。ずいぶんな扱いって気がするが、如雲斎が出るんだからしょうがない。

一番扱いがヒドイ。登場した時点で転生済みってのはイイとしても、最後まで地下室から一歩も出ないままというのはどうか。十兵衛と対決どころか出会いすらしない。魔界衆を捨て、仕官しようとするのは原作通りだが、それを阻止しようとする森宋意軒に爆殺されるという、ある意味度肝を抜く展開に。何の為に出てきたのかサッパリ分からない。武蔵なのに。


最後、その他の人々。

  • 森宋意軒

四郎の忠実な僕。切り落とされた腕を動かしたりするんで、妖術の心得はあるんだろうけど、魔界転生は四郎がやってしまうので、まるで目立たない。冷酷に徹しきれない四郎を心配したりと、それなりにアピールはしてるんだが。

  • おひろ

故人。回想シーンのみの登場。お雛の姉として登場。ということで田宮平兵衛の孫娘。

  • お雛

もう完全にオリジナル。おひろの妹。登場の理由は「亡き姉の墓参りに江戸にやってきた」。腕に六芒星のアザがあり、これがサタンの生贄への証だったりするので、四郎に狙われる。坊太郎を動揺させまくり、その上姉と同じく坊太郎に惚れちゃったりするもんだから、四郎の嫉妬心を煽りまくる。こんなんなので、原作にあった脱出のシーンなんてあるわけがない。十兵衛以外では、話に関わる中で唯一生き残るキャラ。

  • お類

原作には全く無関係なオリジナルキャラかと思った。だって本作では8歳くらいの少女だし。「水晶の瞳」という特異体質で、読心能力の持ち主。その気になれば他人を操ることもできる。小西行長の血縁だが、その能力から化け物扱いされ、村八分だったところを四郎に救われ、以後慕うようになる。無邪気で皆の人気者。こういうキャラは...と思ってたら、案の定四郎をかばって死ぬ。

ちゃんと出るよ。人間のままで。最後は四郎に操られた根来忍者に殺される。


以下はほとんど背景のキャラ

四郎に吊られて焼かれて殺される。

  • 柳生宗冬

出るには出る。作中では主膳としか呼ばれないが。

出るんだってば。でも途中でなんとなくいなくなる。

実は出番は武蔵と同じくらいある。台詞にいたっては明らかに多い。それだけ武蔵の出番が少ないって話なんだけど。


以上書いてみたら、原作とはまるで違う気がしてきたけど、いやいや、最初にいった通り意外と忠実なんですってば。
だいいち、石川賢の爆裂バージョンに比べればねえ。まあ、アレに比べればなんだって忠実に見えるだろって言われたらそれまでなんですけど。