復楽園

失楽園」を読み終えたんです。
ああ、辛かった。いやもうツマラナイんですよ。特に下巻は説教ばっかで。
時々面白い場面もあるんだけど、ホントに時々なんですよ。
そんなもんを、途中かなり流し読みしたとは言え、最後まで読んだのはひとえにヒマだったから。
やっぱさ、物語には怪獣出さなきゃダメだよな。
序盤は堕天使軍団という、怪獣もしくはショッカーみたいな連中出てくるから派手なんですよ。
あと、混沌の領域にいる魑魅魍魎とかもエンターテイメントしてました。
それがなくなるともう地味だし堅苦しいしで、ページがまるで進まないんですよ。
妖星ゴラス」に怪獣ムリヤリ出したって話あるけど、アレがいかに賢明な行為だったのかよく分かりました。
あとウンザリしたのが、出てくるキャラが喋る時、とりあえず神を賛美してから喋りだすんですよ。
そりゃそういう作品だってのは知ってたけど、いちいちマンセーハレルヤ。分かったから次進めよ!
神=力道山とすれば、この過剰な賞揚ぶりもドロリとした舌触りが加わってくるけど、ずっと綺麗事ばかりだと辛い。
そこを乗り越え、サタンの誘惑と楽園追放のあたりになるとページが進みだす。これが時々の場面。
サタンの誘惑の負けたイブが知恵の実を食べ、アダムと再会するんです。
イブが祝福を失ったのを知った後、ワシらは夫婦!一蓮托生よ!と自らも知恵の実を食うんですね。
しかし、食ってみたら世界は恐ろしいものに変わっちゃった。するとアダムは豹変。罵詈讒謗の嵐ですよ。
「この蛇め!」といきなり嫁さんを畜生呼ばわり。以降、ひたすら災難は全部お前のせいじゃと責めたてる。
そこから、なんで女なんてもんがおるんじゃ!これこそ災厄の元凶よ!なんてことも言い出す。
天国見てみい、天使は全部男。地上も男だけの楽園にしとけば間違いは起きんかったんじゃ!と大炎上。
え、天国ってそうなの?どこ見ても胸毛と脛毛か。つまりヴィレッジ・ピープルは正しい!YMCA!
でも天使って性別無かったんじゃなかったっけ。それに相手(女)が欲しいとねだったのはアダムじゃん。
そんなこと言われたイブはもうボロボロ。大泣き。ザ・修羅場。
この場面、ヒドいけどよく分かる。人間追い詰められると、ヒドいこと言っちゃいますよ。
両親の夫婦喧嘩を何度か見たけど、激しい時はこんな風に直接関係ないことまで持ち出して罵りあってたもんね。
傍から見れば、オレも誰かと喧嘩して、テンパってる時はこの程度のもんなんだろう。
エデンでひたすら優等生な態度とってたアダムより、はるかに身近に感じられます。
その後落ち着いたら、さすがに言い過ぎたと思ったのかフォローらしいことも言ってますしね。
この場面の後はひたすら説法。
大天使ミカエルが、お前ら追放ね、でも悪いことだけじゃないよと言い渡す場面が延々と続く。
アベルとカインとかノアの箱船とかバベルの塔とか、それ以降の予定の話ですよ。
そこに「女の末裔」の話が出てくんですね。
女は罪深い、つうか罪の原因。だから男に従ってりゃイイんだよ!って話に持っていかれがちなアレですよ。
罪深いかもしれんが、そんだけじゃねえだろと諭すワケですね。ミカエルの口を借りて、作者のミルトンが。
「女の末裔」には悪い奴も多いが、イイ奴もいる。最後にはマリアがいて、そっから生まれるのがイエスでじゃん、と。
これは、いかにもキリスト教な救済の話だけど、教えの根っこにある男尊女卑的な部分へのフォローとも取れますね。
まあ、男だけがエラ〜イの考えじゃ実際生活が成り立たんって。アレは現実逃避の一種だよ。
この辺、読み物としては退屈なんです。所詮説教だし、もう怪獣なんて欠片ほども出ないし。
でも得るものはあった。「絡新婦の理」の憑き物落としの理解にゃ役に立つ。
というワケで頑張れ「魍魎の匣」!