タラ仲間

ドラキュラ紀元」を読んだんです。

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

やまいったね。これは怒涛の小説ですよ。何が怒涛ってそのオタクっぷりが。
舞台はヴィクトリア朝時代のイギリス。
ヴァン・ヘルシングとの対決に勝利したドラキュラはヴィクトリア女王と結婚し、名実共にイギリスを支配。
政府はもちろん、街のいたるところに吸血鬼達があふれるヴァンパイヤ王国の誕生!
となるとやっぱアレかと思ってたら、案の定大量の吸血鬼が登場。それにイチイチ元ネタがあるんですよ。
こっちだってホラーファンの端くれ。ヴァーニーやルスヴンくらい知ってるぜ!と臨んだけど、こりゃ無理だ。
だってコスタキ、フィオンギュアラとかいう名前を「アイツアイツ、分かるでしょ?」てな具合に出してくんですよ。
分かるわけねえよ。誰だよそれ。こんな名前で「ハハーン」となる奴っているのか?
映画の吸血鬼も大量に登場。オルロック伯爵とか。ブラキュラまで出てくる
ブラキュラことマムワルド王子は、アフリカで尊敬を集めてるそうです。となると、欧州以外にも吸血鬼が?
いるんですね。我がアジアからもキョンシーが参戦。
なんでイギリスにキョンシーがと言うと、こいつ中国人秘密結社の一員なんですよ。
その秘密結社のボスってのが通称「悪魔博士」。怪人フー・マンチューですよ。
これはヴィクトリア朝ものでもあるので、「犯罪界のナポレオン」と呼ばれる数学教授とか、その辺も大量に出演。
当然、ホームズ兄弟も出ます。ジキルとかモローとかグリフィンとか。火星人は攻めてこないけど。こんだけでもゲップが出るけど、これはさらに「切り裂きジャック」ものでもあるんです。
吸血鬼娼婦だけを狙った連続殺人が起こるんですよ。当然新聞社にイロイロ送りつけたりして。
でもって犯行現場にあった文章を警視総監(吸血鬼)が消しちゃったり。
「やっぱヴィクトリア朝といえばジャックでしょ」って人も多いから、これは当然の展開ですね。
ドルーイットも出てきますよ。殺人現場近くで医者やってます。
ヴィクトリア女王とかドルーイットとか、実在の人物の名前出ましたけど、それも大量に出ます。
正直「誰?」ってのが多かったけど、笑ったのがオスカー・ワイルド
この人ちゃっかり吸血鬼になってるんですが、今は創作活動やめて男色ライフを満喫中だってさ。
ブラム・ストーカーと女めぐってイロイロありました...ネタも当然出てきます。
あ、そうだ。エレファントマも出てくるよ。


全編こんな感じで、名前だけ登場を合わせりゃ、登場人物は200人くらいいます。
その為、巻末には人名辞典が収録されていて、簡単な解説があります。
解説されてもサッパリ分からんてのがほとんどでしたが。アイツねと理解できたのは、全体の1/3もいないよ。
まあ、話を追うには関係ないので、分からんでもOKではありますが。
感想としては、面白かったです。文章も読みやすいし。
しかし、これ作者キム・ニューマンってのはタンティーノ臭いですよ。やってること「キルビル」と同じ。
あとがきに着想を得た作品タイトルをズラズラ並べたり、謝辞として人名をこれまたズラズラ並べたりとか。
キョンシーの出る場面だって、女吸血鬼との血まみれゾーモツまみれになりながらのドツキ合いだし。
違うのは、その女吸血鬼ってのが、500年近く生きてるけど外見は16歳の美少女、しかもハスっぱなヴァンプじゃなくて、どっちかつうと清純派という、我が国のオタク界隈じゃゲップが出るほど見かけるタイプだってことですね。
でも、これ映画化するならタランティーノじゃないな。ギレルモ・デル・トロですね。
もしくは、外道の正体を現し、真の力を解放した宮崎駿かな。