ばけものさ

どろろ」を観たんです。
先に酷評を読んでたからか、そんなにひどい映画とは思わなかったです。
素晴らしい!とは思わないけど、ケツから臓物引きずり出してやる!とも思わなかったです。
ただ、詰め込みすぎだよなとは思った。マイマイオンバの話と「ばんもん」の2つをやるのかよ、と。
マイマイオンバの話だけでも良かったんじゃない?あの話だって「作家性でござる!」を発揮できたはず。
「子を捨てる親」「捨てられた子供」「子を育てるために殺す親」とドラマチックな要素沢山あるから。
あ、「盲目的な愛(別名エゴイズム)から子供殺しすら容認する男」ってのもあるか。いけそうじゃん。
マイマイオンバに集中して密度を高め、ばんもんと醍醐一家の話は別の機会に、として欲しかった。
あと土屋アンナは、顔は合格だけど台詞回しがチョットね。


作品そのものに関してはこんくらいなんですが、それとは別に思ったことあります。
この手の作品の宿命である、原作との比較ですよ。
この映画に満足した人の発言で「この映画はアニメ版ファンの為のものでしょう」って意見あったんですよ。
オレは観てないから思いつかなかったけど、アニメ版がありましたね。
先に始まったのは漫画の方です。だから原作はどれか?といえば漫画版でしょう。
でも、完成度ではアニメの方が上と言う意見もありますから、アニメ版を基準にする人だっているでしょう。
アニメ版はここで観れるのね。
http://movie.i-revo.jp/ice/special/060614/dororo/index.php
23話のタイトルは「人喰い大木」。これって映画の中盤に出てきた能面大木のこと?やっぱ映画の原作ってアニメ版?
ネットにある原作との比較のうち、大半が漫画版との比較。アニメ版と比較ってのは不意を突かれましたね。


次、漫画版との比較の話。以下は「どろろ」に限った話じゃないんですが。
しかも、ハッキリとした根拠があっての話じゃないんで、トンマなこと言ってるかもしれないです。
今は40代と10代が同じ作品を読んでることは珍しくないですな。
でも、同じ「作品」を読んでても同じ「もの」を読んでるとは限らない。古い作品の場合、改訂されてることがある。
よく巻末に「現在の目で見れば差別的な表現だけど、作者にそのような意思はなく〜」てな但し書きあるけど、そう書いてあるからといって、初出もしくはそれに近い時期の状態のままだという保障はない。
改訂が、但し書きがあればOKって風潮ができる以前に行われ、その状態のままのものが現在流通してる可能性もあるから。
特に手塚作品の場合、作者がすでに故人だから改訂ができないってのが言い分です。なら存命中にあったかもしれん。
それに単行本収録時にイロイロ変更なんてのは、今だって時々ある話ですけえのう。
こんな例があるんです。ここで「アラバスター」の変更点を紹介してるんですよ。
http://homepage2.nifty.com/074/atomE01.htm
http://homepage2.nifty.com/074/atomE02.htm
「そう、おまえはばけものさ。まともな女だと思ってるのか?」だって。
すげえなあ、オイ。バーホーベンかよ。
作品やその回が問題あって、まるごと消されたとかの大事なら皆の話題になるしイロイロ情報もでます。
しかし、台詞だけ、コマだけ、ページだけという、地味なものだと、案外知れ渡らんものですよ。
記憶だけが頼りってことになりがちだし。
どろろ」がそうだとは言わない。そうだという根拠ないからね。
でも、年が離れた相手と意見を交わす際、こういう読者にはどうにもならんことが原因で、認識にズレが生じることがある。
頭の片隅でもいいから置いといた方がいい。オレはそう思うんです。