ポールの流刑地

「ブラックブック」を観たんです。
上映開始前、劇場を見渡すと客はオバチャンばかり。バアサンもいた。客の中で間違いなくオレが最年少。
男の客もいたけど、明らかにオバチャン達のダンナさん。
平日の昼間だから当然の光景かもしれんけど、でもこれから上映されるのはバーホーベン映画。皆騙されてないか?
興行会社なんて「騙すより、騙される方が罪深い」と平気で言う連中だよ?
でも杞憂でした。終わってみれば客層にも納得。
戦争!復讐!禁じられた愛!後は裏切り裏切り裏切り。醜い嫉妬(終盤のアレってそうだよな)もあるよ。
女性週刊誌で連載されてる漫画みたいな話でしたね。
主人公の恋人になる男が、ナチ!情報部!とエグイ要素たっぷりだけど、素顔はイイ人ってのもそれっぽい。


もちろん、そういうオバチャン的な味わいだけでなく、バーホ先生らしいエグ味、オレ達にとっては旨味もたっぷりです。
始まってすぐに爆撃。でもって機関銃バリバリで死体の山。やたらと便所。映画館でボカシ見たの久々ですよ。
あとウンコバケツ!
わざわざ中身見せるし、量はタップリだし、てことは絶対やるよな〜と思ってたら案の定ですよ。
あの場面は調子にのってる連中の醜さを描いた、人でなし風味たっぷりの場面だってのは分かってます。
でも「よっ!ポール屋!」と声あげたかった。バーホ先生の過去の作品を知る人には、分かってもらえる感覚だと思う。


あと、前から思ってたことだけど、バーホ先生ってオッパイを粗末に扱いますね。
普通なら「素晴らしい」とか「たまらんのう」といった扱いするもんだけど、先生の場合おらよって出すだけ。
皿に盛り付けたりしないで、ダンボール箱のまんまで「食えよ」って言ってくるの。
スターシップ・トゥルーパーズ」の男女共同シャワーの場面ってそういうことですよね。
盛り付けたら盛り付けたでウンコ&血まみれだし。
氷の微笑」は?と言われそうだけど、アレはオッパイで魅了ではなく、威嚇して服従させてるじゃないですか。
シグルイ」における「笑み」と同じ類のものなので別枠でしょう。
ショーガール」はエエもんとして扱ってはいるけど、狙いすました一撃ではなく、ブワァーとバラまく感じだし。
「ブラックブック」にもオッパイはあるけど、あれで興奮する人って少ないですよ。
ウンコバケツで興奮する人もいるだろうけど、それは特殊なパターンだから置いといて。
バーホ先生のオッパイに対する扱いは、人間に対する扱いがそのまま出てるってことなんでしょうね。


で、結局どうだったのかというと大満足でした。2時間半ある映画だけど、全く退屈しなかった。
柳下毅一郎がバーホ先生に「大奥」とか「愛の流刑地」の濃いい続編作らせろと言ってたけど、全くもって同感。
ドロドロどころかベットリ、融点ギリギリの半固形物かってくらいのもの作ってくれるハズ。
バーホ先生が日本で映画を作るってのは、もう陵辱と言うべき行為かもしれないかもしれない。
でもイイ!ここはリスペクト愛ルケでいこう。バーホ先生、私をめちゃくちゃにしてください!