リアルったらリアルだよ

ウルフガイ」の1巻を読みました。

なるほど、今やるとこうなるよねえってのが感想です。お話は、ほぼ原作通りでした。
絵の方は、ちゃんと登場人物が中学生に見えない。
若者の外見ではあるし、今風の絵なんだから可愛らしい部分もあるけど、それでも許容範囲内です。
いや、ホっとしました。
青鹿先生が異常巨乳だと聞き、流行の萌えッ気たっぷりの絵だったら、どうしようかと思ってたんです。
内容が内容だからってのもあるけど、それ以前に原作(ハヤカワ文庫版)のイラストが生頼範義ですからね。
たとえ13歳のキュートな少女でも、その手にかかれば33歳の妖艶な女にしてしまうオーライ先生ですよ。
そのイメージを引きずってるから、萌えだと納得イカンのです。


ここで「いやあ、今後の展開が楽しみですね」終わりたいけど、終われない。
ウルフガイ」というのはオレにとって、少年時代の良き思い出であると同時に地雷でもあるんです。
地雷どころじゃないな。大空襲ですよ。カーティス〜と言ったら、ルメ〜イと返事がくるくらいの。
ウルフガイ」シリーズ継続中に、作者の平井和正が宗教にはまり、それが作品にモロに影響し作風が一変したんです。
それはいい...いや、よくはないけど、その後の展開に比べればどうってことなかった。
その後の展開ってのは、リアル犬神明の登場ですよ。今回漫画になった方じゃなくて、別シリーズの犬神明ですけどね。
リアルってなんだよって?リアルってのは比喩でも冗談でもなく、実在して目の前に現れましたってことですよ。
犬神明ってのは小説のキャラクターですよ。
しかも、満月になると狼に変身して、不死身の体と素手で戦車を倒す力を持ち、CIAやナチの残党を相手に大暴れし、小型原爆背負って被爆しても2,3日寝込むくらいですんじゃうってやつですよ。
その後に、実は前世は獣人族を率いる魔王で、地獄でブイブイいわしてたけど、天使に遭って改心してソドムの町でロトを助けました...なんてことまで言い出すやつですよ。
そこに「犬神明って僕のことですね。僕も不死身だし、似たような経験してます」と言う人物が現れた。
架空のキャラクターに自分を重ね合わせ、本気で自分のことだと信じ込んでしまう人間がいるってのはタマに聞く話です。
有名な作家になると、そういう人間との接触を経験する人も多いらしい。
明らかに素人がどうこうしてはいけない状態の人間だから、普通はなんとかやり過ごして、後は関わらないようにする。
でも平井和正は違った。「なるほど、アナタは本物だ」と信じて受け入れちゃうんですよ!
さすがに簡単には信じなかったみたいだけど、いや、簡単もクソも普通は最初から最後まで信じないって。
そのことを雑誌で発表して、さらに「全国には他にもウルフガイが実在するはず。この記事を読んだウルフガイは連絡下さい。真・八犬伝の始まりです」なんて言ったんですよ。
そうしたら「私も同じです!」って返事が来ちゃった。ガイじゃなくて女性でしたけどね。通称、犬神少女さん。
この犬神少女さん、二足歩行の人間から、四足歩行の狼に完全変身したそうです。もう、どうにでもしろやコラ。


以上、有名な話ではあるんですけどね。とにかくショックだったなあ。
もう無理だって思いましたね。こんなん、いくらなんでも付いていけない。大好きな作家だったのに。
今なら違った感想持てただろうけど、当時はまだ子供だったからキツかったなあ。
しばらくは、平井和正の本読めなかったですよ。
現在、平井和正はそういった状態を抜け出し、あの時はちょっとばかしアレだったなと思ってるそうです。
リアルさんに対しても、彼が本物だったかは今となっては分からない、でも彼の人柄が好きだった...てな認識に落ち着いてるみたいだし。
なので、今回の漫画でそういう話が出てくることはないでしょう。
関わってる人がアレだった頃に書かれた「バチガミ」と被ってるそうですが、「バチガミ」は恐ろしくて読んでないから分からない。
まあ、少なくとも「狼の紋章」は全部までやって欲しいですね。できればその後もやって欲しい。
虎4と西城恵が好きなんで、この2人が活躍する話を読みたいですけえのう。