「25人」の白雪姫

「25人」の白雪姫

ニクオが25人の意味を知った時は、すでに手遅れだった。


海外旅行を趣味とするニクオは、向かうつもりの土地に「25人の白雪姫」という噂話があることを知った。
そこには白雪姫と呼ばれる美女達がいて、その数は25人。25人の白雪姫達は山奥で暮らしている。
興味はわくが、信憑性はまるでない話だ。
ホテルの受付に噂の話をしたのも、単なる気まぐれで期待はしていなかった。
しかし受付は噂を知っていた。それどころか場所までの道のりを、地図にしるしをつけて説明してくれた。
噂は本当なんだろうか。妙に具体的になった話に心動かされ、ニクオはその場所に向かうことにした。


目的地近くとおぼしき場所にたどりつくと、そこには1台の車がとまっていた。
運転席には老女が座っている。まさか白雪姫というのはこの老女のことか。
ならば、それほど期待していたわけではないが、若干はあった下心を裏切られたことになる。
まあ、所詮は噂話だったなと苦笑するニクオに老女が声をかけてきた。
なまりはキツイが、それでもこの土地に来てから一番聞き取りやすい言葉だった。
「25人の白雪姫」の噂を聞いてやってきたことを告げると、老女は白雪姫の住む場所まで連れていってやろうと言う。
警戒はしたが、イザとなれば相手は老人だということで、申し出を受けることにした。
「白雪はイイ子だよ。とっても素直で美人だ」運転しながら老女が言う。
まるで白雪姫が1人であるかのような物言いに25人では?と聞くと「25人?うん25だよ」と言う。
どうも話が通じ合っていないようだが、それ以上は聞き返さなかった。
ニクオの関心は、その後に続いた「あの子はアンタを気に入るよ」という言葉にあったからだ。


やがて小屋にたどりついた。ここで待て、すぐに白雪が来るからと言い残し、老女は去っていった。
小屋の窓から外を眺めていると視界に人影が写る。女だ。
女は全裸だった。白い肌に腰までのびた黒髪が映える。
白と黒に彩られた中、そこだけは異様に赤い唇が艶めかしい。
扇情的とも幻想的とも言える光景に、ニクオは言葉を失ったが、ふと違和感を覚えた。
あの女、さっき大木をかき分けなかったか?
窓枠に収まっていた女の全身は下半身しか見えなくなり、ついにつま先しか見えなくなった。
これは幻と思いたかったが、女が歩みを進めるたびに響き渡る轟音と、小屋を揺るがす振動がそれを許さなかった。
天井が引き剥がされた。数メートルはあろう美貌が視界を占める。
ニクオは出発前に少しだけ覚えたことを思い出した。
海外ではあまりに巨大なものを、数量は1つでも複数形で現すことがある。聖書に出てくる表現だったはずだ。
ならば、25人というのは人数のことではなくて...それ以上、ものを考えることはできなかった。
形のいい、しかし丸太ほどもある指がニクオをワシづかみにしたからだ。


25人ではなく、25人分の質量を持つ白雪姫は、締め上げられ、リンゴのように赤く膨れあがったニクオの頭を口元にはこんだ。


オレもやってみたんです。だってヒマだからな!
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