ポニョはエィガ

崖の上のポニョ」を観たんです。といっても1週間前の話ですが。
たしかに妙な映画で、ホントに異様でしたね。
パステルカラーのクトゥルフ神話」「善人しか出てこないミスト」と言われてましたが、全くもって同感。
上の2つってさ、「白い黒」「生真面目な怠け者」みたいなもんでありえないだろ!と言われるでしょうね。
でもホントにそうなんだから仕方ない。だから観た人の多くは唖然としてるんじゃないですか。
唖然と言えば、腹の底から唖然とした台詞があって、ある人物の口から「半魚人」って言葉が出るんですよ。
この「半魚人」だけは絶対に出てこない台詞だと思ってたんですよ。なのに2連発で登場ですよ。
ポニョに対して「人面魚」って言葉が使われることが話題になってたじゃないですか。
それを言ったら、作品世界の土台が木っ端微塵になっちゃうじゃないの...と。
でも土台が木っ端微塵になっても雰囲気は残るわけですよ。臭いと湯気だけでも、ああ、鍋を食ってたんだなて感じで。
「半魚人」って台詞はその雰囲気すら吹き飛ばす核爆弾ですよ。もう屍すら消し飛んじゃいますね。


この映画をぶつけられて困るのが、どこまでが計算なんだろう?ってことですよ。
上の「人面魚」「半魚人」って言葉は、『ホーリー・マウンテン』的なチト小賢しいくらいのものじゃないですか。
「お前らどうせ半魚人呼ばわりすんだろ?おお半魚人だぜ。そんなことは予測済み。だから先に言ってやったぜ!」
そんな宮崎駿の声が聞こえてくるよう。もう宮崎先生はフハハハと高笑いしてるに違いないんです。
それに対しオレは困惑するわけですよ。その行為にいったいなんの意味があるんだよ!と。
こういう行為って、メタフィクショナルな、前衛とか実験とかそんな言葉で括られる作品なら珍しくない。
または、完全に認知症となったジイサンがひり出した、極彩色のウンコってんならこんなもんだろうと思える。
でも全体的に見ると、ごく当たり前の普遍的な作品を作ろうって意思もはっきり感じられるんですよ。
おかげでひたすら困惑するわけです。どうすりゃいいんだよ。
否定的に思われるかもしれないこと言ってきましたが、結論を言うとああ面白かった!です。
はなッから変な映像ばっかだし、津波は魚や粘液生物になってるし、怪獣(古代魚)出るし。
序盤でポニョがソースケの血を舐めるわけですが、そん時って口がガバっと開いて舌をベロリと出すんですよ。
ポニョを完全にバケモノとして描写してるワケで、その心意気にオレはジーンときましたね。


大いに楽しんだオレですが、否定派の言うことも分からないではないんです。
特に終盤に出てくる試練が甘すぎて、試練として成立していないというのはご尤も。オレも終盤はチト退屈しました。
でも、そんなアナタにお勧めなのがこれですよ。

ほら、これだと思えばとてつもない試練でしょ。5歳児どころか、50歳の大人にだって重すぎる十字架ですよ。